長期債の方が短期債よりリスクが高い理由をざっくり説明する

こんにちは、悪口と資産運用が大好きな悪口投資家です。

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で長期債の方が短期債よりリスクが高いという話をした。 今回はその理由を簡単に説明したいと思う。

金利と債券価格の関係

毎年 C円の利息が支払われ、 T年後に元本 F円が返済される債券( T年債)を考える。 この債券のキャッシュフローを書き出してみると、

  • 1年後: C円もらえる
  • 2年後: C円もらえる
  •   \vdots
  •  T-1年後: C円もらえる
  •  T年後: C+F円もらえる

といういう風になる。このとき、

とすると、債券価格 Pは、 t年後のキャッシュフロー 1/(1+r)^t倍して現在価値に直したものの和なので、

 P=\sum_{t=1}^{T}\frac{C}{(1+r)^t}+\frac{F}{(1+r)^T}

になる*2。 この式を見ると明らかに債券価格 P金利rの減少関数である。なので、金利が上がる(下がる)ことと債券価格が下がる(上がる)ことは同値である。

なぜ長期債は短期債よりリスクが高いか

金利 rが変化したときの債券価格 Pの感応度をデュレーションと呼ぶ*3。直感的には、金利が1%上がったときに大体*4何%損するかという意味になる。式で書くと、

デュレーション =-\frac{1}{P}\frac{dP}{dr}

である*5。次元が 1/rなので、次元は時間(年)である。

 T年債の例で計算すると、

デュレーション =\frac{1}{P}\frac{1}{1+r}\left(\sum_{t=1}^{T}\frac{C}{(1+r)^t}t+\frac{F}{(1+r)^T}T\right)

になる。普通の状況だと、 Tに比例する項が一番効くので、長期債の方がデュレーションが長くなる。 短期金利長期金利も同程度に変動する*6と思うと、デュレーションが長いほど債券価格の変動率も高くなるので、リスクが高くなる。

デュレーションの具体例

ここで具体的な債券ETFデュレーションの値を確認してみる。

www.ishares.com

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ブラックロックの債券ETFであるAGGとTLTのデュレーション*7を↑のリンクから調べると、AGGのデュレーションは6年強、TLTのデュレーションは18年強であり、TLTの方が3倍程度デュレーションがあることがわかる。つまり、TLTの方がAGGよりはるかにリスクが高いので、同じ米国上場の債券ETFだからといって同一視すると、リスク量を見誤ることになる。

*1:正確には最終利回りだが、ここでは雑に金利と呼ぶ。

*2:というか、この式が成り立つように定義された金利が最終利回りである。

*3:正確には、デュレーションにもいくつか種類がある。

ja.wikipedia.org

*4:大体というのは「線形近似の範囲内で」という意味である。

*5:マイナスが付いているのはデュレーションを符号をプラスにするためである。

*6:これは結構怪しい仮定だが、長期債の方がリスクが高いのは事実である。

*7:Effective Durationって書いてあるやつである。