リターンの予測は難しいがリスクの予測はある程度可能

こんにちは、悪口と資産運用が大好きな悪口投資家です。

インターネットで資産運用について調べると「S&P500はどんな暴落も乗り越えて年〇%のリターンを上げてきた!S&P500最強!いつもいつでもS&P500を信じて積立!」というようなインデクサー*1のブログがヒットする。 しかし、残念ながら過去のリターンを以って将来のリターンを予測するのは難しい。 この記事では、リターン予測の困難さとリスクはある程度予測できるということをSPY*2のデータを使って説明する。

使用データ

finance.yahoo.com

SPYのデータは↑からダウンロードした値を用いる。 期間は1993年2月~2021年3月である。

今月のリターンから翌月のリターンを予測することは難しい

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SPYの月次リターンの推移
↑の図はSPYの月次リターンの推移である。 見てわかる通りギザギザしており、予測が難しそうな感じがする。

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横軸はある月のリターン、縦軸はその翌月のリターン
横軸をある月のリターン、縦軸をその翌月のリターンにとして散布図を描いたのが↑のグラフである。 どう見ても無相関に見えるが、相関係数を計算してみると0.03とほぼ無相関である*3

というように、今月のリターンを使って翌月のリターンを予測することは難しそうであることがわかった。 ちなみに、月次リターンではなく日次リターンや週次リターンを使っても同様の結果が得られる。

リスクはある程度予測できる

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SPYの日次リターンの推移
↑の図はSPYの日次リターンの推移である。

月次リターンの場合と同様、ギザギザしていて予測は難しそうであるが、よく見るとギザギザ度合いは時期によって異なることがわかる。 たとえば、2000年代後半のリーマンショックや2020年3月のコロナショックの時期には他の時期よりも振幅が大きいのがわかるだろう。

ざっくり言うと、振幅の大きさがリスクの大きさである。 リスクの大きさは時間変動しているが、グラフを見るとリスクの大きさにはある程度の継続性がある気がする。

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横軸はある月のリスク、縦軸は翌月のリスク

ある月の日次リターンの標準偏差(を年率換算したもの)をその月のリスクとして、翌月のリスクとの散布図にしたものが↑である*4。 見てわかる通り、順相関である。 実際、相関係数を計算すると0.65である*5

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SPYのリスクの大きさの推移

↑の図は各月のリスクの大きさの推移をグラフにしたものである。 グラフからわかるように、リスクの大きさは一定ではない。 しかし、リスクの大きさは時期によって変わるが、ある程度の継続性がある。 リターンの予測は難しいが、リスクの予測はある程度可能なのである。

*1:当ブログの藁人形。

*2:みんな大好きS&P500に連動するアメリカ最古参のETF

*3:p値は0.58だったので無相関と言ってよい。

*4:見づらくなるので、一部の外れ値は図から外してある。外れ値を含めてもこの後の議論は変わらない。

*5:グラフから外した外れ値を含めて計算している。