最適なレバレッジ比率を考えると株にレバレッジを掛けるのは微妙
こんにちは、悪口と資産運用が大好きな悪口投資家です。
レバレッジ投資信託やレバレッジETFという金融商品があって、個人投資家に結構な人気がある*1。 これらの商品は、日々の値動きが日経平均やS&P500など*2の値動きの倍になるように設計されている*3。
具体的なレバレッジ比率としては、2倍や3倍のものが多いが、↑のように4.3倍というものもある。 資産を最大化したい場合には、何倍のレバレッジを掛けるのがよいのだろうか? 実は理論的に最適なレバレッジ比率を求めることができるので、説明したいと思う。
レバレッジを掛けすぎてもダメ
期待リターンがプラスの資産に投資する際には、レバレッジを掛ければ掛けるほど儲かりそうな気がするが、これは間違いである。 たとえば、100倍のレバレッジを掛けると、1%株価が下落しただけで投資資金を失うことになる。 なので、0倍(投資しない場合)と100倍(破産する場合)の間のどこかに最適なレバレッジ比率があることがわかる。
シャープレシオ÷リスク倍のレバレッジを掛けるのが正解
実は、資産のリターンが対数正規分布に従うことを仮定すると、資産を最大化するために最適なレバレッジ比率を求めることができる。
細かい計算を書くとアクセス数が伸びないので結果だけ書くと*4、
になる*5。
S&P500の例
↑で過去30年くらいのデータから計算した値を使うと、S&P500では、
- シャープレシオ=0.36
- 年率リスク=0.198
なので、最適なレバレッジ比率は、1.8倍である。 という訳で、過去と同程度のリターンやリスクになると思う*6のであれば、S&P500のレバレッジ商品にフルベットするのはやめたほうがよい*7。
ハーフケリー
更に難しい計算なので詳細は省くが*8、 ケリー基準に従って投資をすると、途中でかなりの含み損を抱えることがあり、メンタルに多大な負担がかかりうる。 メンタルの軽減するためのギャンブラー*9の経験則に「ハーフケリー」というものがある。
ハーフケリーとは、ケリー基準の最適解の半分(ハーフ)だけ賭けようという非常にシンプルな戦略である。 レバレッジをケリー基準の半分にすると、リスクは半分になるが、期待リターンは4分の3にしかならない。 逆に言うと、期待リターンの4分の1を放棄することで、メンタルへの負担を半分にすることができる。
先程のS&P500の例で言えば、ハーフケリーによって推奨されるレバレッジ比率は0.9倍になる*10。 過去と同程度のリスク・リターンを期待するのであれば、全財産S&P500インデクサーすら避けたほうがよい。 ハーフケリーに基づいてレバレッジ2倍で投資するためには、過去の2倍強のリターンが必要になるが、長期的に妥当な水準とは思い難い。 今後の株式市場にかなり強気の見方を持っているのでなければ、株にレバレッジを掛けるのは微妙である。 *11
*1:SBI証券の売買代金ランキング上位にはよく日経平均レバレッジETF(1570)がいる。
*3:先物取引等を使って純資産のX倍のエクスポージャーを取るように投資している。
*4:en.wikipedia.org 細かい計算に興味がある人は↑を参照してほしい。
*5:これをケリー基準と言う。
*6:リスクについては長期的な水準は過去とほぼ変わらないと考えてよさそうであるが、期待リターンについては予測が困難であり、どう考えるかは人それぞれである。
*8:http://www.eecs.harvard.edu/cs286r/courses/fall12/papers/Thorpe_KellyCriterion2007.pdfwww.eecs.harvard.edu細かい計算は↑。
*9:ケリー基準は元々ギャンブルのための公式である。
*10:どういう理屈かは知らないが、バフェットもS&P500に90%を推奨しているらしい。
*11:waruguchinvest.hatenablog.com 債券については、↑で計算したようにリスクが低いので多少悲観的にリターンを見積もっても、ある程度のレバレッジは否定されないだろう。